Treasure in Paradise【Brack☆Jack2】
 気が付くと、深く深く、自らの腕に爪を立てていた。


「人殺しをしていくことで生きてきた…そんな自分が嫌で嫌で…でもどんなにあがいても、そこから抜け出すことは出来なかった…」

「でも、今は違う…でしょ?」


 ミサトの右手にそっと手を添えて、ユイは静かに言った。

 血がにじんでいることにも、本人は多分気付いてはいないだろうと思い。


「エイジやレンもいるわ。それに、私も」

「ユイ…」

「終わらせるのよ。何もかも」


 みんなが笑って生きていけるように。

 ――まるで、夢でも見るように…。


「来たみたいね」


 微かに人の気配がした。

 ミサトの手をさり気なく左腕から引き離し、ユイは窓の方を見る。

 ほどなくして、エイジとレンが何やらぶつぶつ言い合いをしながら部屋に入ってきた。
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