Treasure in Paradise【Brack☆Jack2】
「もう俺にも、あの子を止められないだろうよ」


 もしも、あの子が本当に、生きる事を選ばなくなったら。

 それを止める権利は、誰にもないのだ。

 そしてそれが、せめてもの救い。

 生きているその意味、自分の意志すら尊重されない組織の中で、ミサトは絶えず苦しんでいる。

 なら、せめて『死』という選択の自由を与えてやってもいいのではないか。

 店主は最近、そんなことを思い始めていた。

 だが老人は、グラスを傾けて穏やかな顔で目を伏せる。


「――…わしは、信じているよ…」


 静かにただ、そう言っただけだった。

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