Treasure in Paradise【Brack☆Jack2】
「ユイ…」


 真っ暗な部屋に、一筋の光が差し込む。


「母さん…」


 涙と口唇の端から流れる血をを拭うことも出来ずに、ユイは顔を上げる。

 そこにはインホアが立っていた。

 インホアは心配そうにユイに歩み寄り、その顔に手を伸ばした。


「大丈夫? …怪我は」

「触らないで」

「…ユイ…」

「今はあなたに会いたくない。早く戻って」

「聞いて、ユイ。私は」

「話なんてないわ。あなたに助けてもらう義理もない。今の自分の立場も考えて」


 インホアは、まだ何かを言いかけて、やめた。

 伸ばした手を、力なく下ろして。

 そしてドアに向かって、ゆっくりと歩く。
< 156 / 207 >

この作品をシェア

pagetop