Treasure in Paradise【Brack☆Jack２】

終章

～Ｅｎｄｉｎｇ～




　それから一ヵ月が経った。

　ホン・チャンヤーのビルは修復も終わり、まるで何もなかったかのようにダウンタウンにたたずんでいる。

　組織自体はなくなってはいなかったが、カジノやアミューズメントの経営を細々とやるに留まっており、それに異論を唱える者は組織を去り、賛同する者だけがここに残っていた。

　ユイは社長室のデスクで、忙しく仕事をこなす。

　あの時受けた傷は、まだ完全に癒えてはいなかった。

　まだ体中のあちこちに包帯や絆創膏を貼っている。


「コーヒーが入りました」


　ロンに組織を襲撃された時にユイをビルから逃がしてくれた部下のリーが、軽いノックとともにトレーを持って部屋に入ってくる。


「…ありがとう、丁度飲みたかったところよ」


　微笑んで、ユイはコーヒーを受け取る。


「今日は休日ですよ。そんなに働かなくても」

「うん、これが終わったら私も帰るわ。ごめんね、休日に私の仕事に付き合わせちゃって」

「いいんです、ユイさん。ですが…」


　リーは、ユイを見つめた。