Treasure in Paradise【Brack☆Jack２】

「俺はてっきり、この組織はなくなるものだとばかり思ってましたよ」


　その言葉を聞いて、ユイは書類を閉じ、ふっと笑う。


「なんだかね、分かったのよ」

「…何がです？」

「おじいさまの“夢”。全てを破壊することだって言う人もいたけれど…それは違うって」


　ユイは立ち上がり、窓際からダウンタウンを見下ろす。

　晴れ渡った空は、この上なく清々しく感じた。


「でも、ただ一人だけ、おじいさまの夢っていうのを本当に理解してくれてた女性がいたの。今では私、彼女を信じて良かったと、心から思っているわ」


　そうですか、とリーは言った。

　その表情は、ユイと同じように晴々としている。


「さ、今日はもう終わり。あなたも帰っていいわ。ご苦労さま」


　ユイは立ち上がる。

　だが、リーはその場で動かない。

　そんな部下を見て、ユイは笑う。


「今日は、何か予定ある？」

「いえ、特に」

「じゃあ、一緒に来る？　わたしの大事な友達と、ちょっとした食事会をやる予定なの」

「喜んで」


　車を回します、とリーは一礼して、部屋を出て行った。

　ユイは一つ、大きく伸びをする。

　まだあちこちに痛みが走ったが、そんなことは気にせずに。

　そして、バックを手に取ると軽い足取りで、オフィスを後にする。