Treasure in Paradise【Brack☆Jack2】
「あなた達のことはよく知ってるわ。だけど、どうしてもユイは今、ホン・チャンヤーという組織に縛られといて動けない…。本当なら、今あそこにいなければならないのは私なのに…」


 インホアは、悲しそうに目を伏せた。


「本当に、あの子には可愛そうな想いをさせてしまったわ」

「可愛そう…か」


 エイジはそう言って、頭を少し押さえる。

 一瞬、辺りの景色が歪んで見えたような気がして、何回か瞬きをした。

 インホアのつつましやかな笑顔が、急に視界の外に動いて。


「…ごめんなさい、この世界にはもう、安全な場所なんてないのよ」


 頭の上からそんな声が聞こえ、その時初めて、自分が床に倒れたのを悟った。


「お茶に…なんか…入れ…たのか…?」


 その問いに、答えは返ってこなかった。
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