オレンジジュース~俺と一人の生徒~
ヨーイスタート!!
スタートの合図をしてくれたのは、さっき矢沢の荷物を持った『やまも』だった。
久しぶりのハードルだったのに、俺の体はしっかりと記憶していた。
懐かしい風の匂いと、音。
俺は、すっかり高校時代へ戻っていた。
足は自然に前へ前へと動き、
軽々とハードルを飛び越えていた。
隣を走る生徒の影も見ずに、俺は真っ直ぐに前を見ていた。
矢沢…
お前の知らない過去の俺、
しっかり見てくれ。
俺が走っていた頃の姿…
お前に見せることができないから、今しっかり目に焼き付けて。