オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「今日の掃除のお礼に補習減らしてやるよ」
俺の寛大な提案にも、嬉しそうな顔をしない。
ぷーっと頬を膨らませた矢沢は、俺を睨む。
…なんだよぉ。
「この夏は、私は泳ぎたい気分なの!」
矢沢、わけわかんね~よ。
泳ぎたい気分?
それって
俺と一緒に泳ぎたいって意味?
俺と
少しでも一緒にいたいって意味?
鈍感な俺でも
さすがに
伝わるよ……
俺は、照れ隠しに矢沢の髪を触った。
ぐちゃぐちゃと髪を乱して、このドキドキを紛らわそうと思ったのに、
矢沢の髪があまりにもサラサラで気持ちよくて、
俺はもっとドキドキした。