オレンジジュース~俺と一人の生徒~
家族旅行
いつもより少しスピードの出ない車。
今日は直の家族との家族旅行。
矢沢家プラス俺。
直のおばあちゃんの家への旅行に俺も参加参加させてもらった。
お正月の道路は案外空いていて、スイスイと進む。
「先生の高校時代ってどんなんだったの?」
車の中で直が体を乗り出して、俺に話しかける。
助手席に座るお父さんが言う。
「どうせ、いっぱい女泣かせてだんだろ!」
その一言に直がものすごい勢いで怒り出す。
「お父さんのバカ!!そんなことないもん!」
ありがとな、直。
直は俺の全部を愛してくれてるんだな。
俺の過去も未来も全てを
好きでいてくれる。
…だからこそ、言わなきゃいけない。
…だからこそ、言えない。
悲しませたくない。
でも、黙っているわけにもいかない。
俺はちょっと沈んだ気持ちを隠し、笑う。
「俺、超真面目でしたよ!陸上一筋だったし。お父さんみたいに女遊びしてませんから!」
後部座席のお母さんも笑い出す。
「何だ?わしもそんなに遊んでないぞ!あれ?遊んでたか…ははは。」