オレンジジュース~俺と一人の生徒~
新学期
その日から、何度か直の家に行った。
一度目泊まった翌日の朝、お姉ちゃんから言われたことが俺の頭から離れない。
『今、あんたが必要なのは直だけじゃないんだよ』
俺は何もしていないのに、帰り際お父さんとお母さんに何度もお礼を言われた。
「また来てくれよ。」
お父さんとお母さんの笑顔を見るとホッとした。
教師なのに、受け入れてくれた直の家族。
ありえないくらいの大きな心で
俺を迎えてくれた家族。
殴られてもいいくらいのことしてるのに…
俺は、いつしか直の家に行くことが楽しみで仕方がなくなっていた。
でも、親しくなればなるほど、直の家族にも申し訳ないと強く感じた。
俺は大事な話をまだしていない。
直にも直の家族にも…
裏切ってる。
言わなきゃ。