オレンジジュース~俺と一人の生徒~
なぁ、こっち向いてくれよ…
さっきまでの笑顔はどこ行ったぁ。
そんな顔してるお前を送るわけには行かねぇよ、俺。
できることなら…
お前のお姉ちゃんに会いたいよ。
会っても何もできないけど、俺が何かを伝えることができるなら…
きっと、お姉ちゃんも辛いから。
妹が憎いわけがない。
妹がかわいくないわけがない。
矢沢を泣かせた後、お姉ちゃんもまた心の中で泣いているんじゃないか…
矢沢の家は矢沢のお姉ちゃんが荒れていた。
そのことを最近俺に話してくれた矢沢は、俺の知っている矢沢ではなく
俺よりももっと大人でたくさんの苦しみを知っている顔をしていた。
お母さんに暴言を吐くお姉ちゃんを憎いと思ってしまう自分と、
たった2人の姉妹だから仲良くしたいと願う自分がいて…
矢沢の心は
割れそうだった。
なのに、俺にいつも駆け寄ってくる矢沢は
そんな家庭の事情があるとは信じられないほどの笑顔だった。
俺を元気にしてくれる最高の笑顔と明るい声。
自分も辛いのに…
いつも俺を気遣ってくれていた。