オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「話があるの、先生!」
直からの話って何だぁ?
「鍵閉めちゃったぁ!」
俺は自分のテンションを上げる為に、いつものそのセリフを言って、音楽室の鍵を閉めた。
本当はそんなことを言えるような心境ではなかった。
怖かった。
なかなか切り出せなくて、俺は、直の話を先に聞こうとした。
ふざけて、直の制服の中に手を入れてみた。
だからと言って、
俺のこの不安と恐怖が消えるわけではなかったが、少しだけ楽になれた気がする。
言えそうだ。
「直、俺も話があるんだけど、直の話って何?」
少し乱れた制服を直しながら、直の顔を覗きこんだ。