オレンジジュース~俺と一人の生徒~
俺は、責められたかったのかも知れない。
―どうして、もっと早く言ってくれなかったの?
―先生、ひどいよ。
―子供がいるなんて嫌だ!!
そう言ってくれた方が、俺は楽だったかも知れない。
直は俺を一切責めなかった。
それどころか、話してくれてありがとうと言った。
そして、悩ませてごめんねと謝った。
無理していることがわかるのに、俺はどうしてやることもできなかった。
直の優しさを、笑顔で受け止めることしかできない。
なぁ、直。
頑張りすぎないで。
もっと、俺に甘えて。
もっとわがまま言って。
泣いてもいいんだよ。
泣くなら、俺の胸で泣いてくれよ、直。
一人ぼっちの部屋で、月を眺めながら泣くのだけはだめだぞ…
俺は、電話を切った後、切ない気持ちで月を見つめた。