オレンジジュース~俺と一人の生徒~
スキー講習中の教師は結構暇で、自由だった。
生徒はみんな、スキーのコーチの元、練習をしていた。
なにやら不思議な気持ちになる。
俺のかわいい生徒を取られた・・・みたいな。
俺のかわいい生徒達に、何を偉そうに教えてるんだぁ!!
リフトの上でそんなことを考えていると、あっという間に降り場に着いた。
1年ぶりのスキー。
去年の冬は、修学旅行の付き添いと、大学時代の仲間との旅行で二度滑っていた。
滑り終えると、クラスの女子が走ってきた。
「新垣先生、かっこいい!」
「あんなにうまいなんて知らなかった!!」
直がこの光景を見ていませんように・・・
そう思った瞬間だった。
遠くから、俺を見つめる直を発見した。
頼むぞ、中田。
俺の直を面倒みてくれ。
今は、抱きしめてあげることができないから。
この修学旅行は、直にとって、とても辛いものになると予感した。
直の担任ではない俺が、直と近付くことは不可能に近かった。
でも、直はどこにいても俺を見つけてしまうだろう。
俺が女子生徒と一緒にリフトに乗る姿や、
写真を撮る姿・・・
俺に雪を投げてくる生徒に、俺が雪を投げ返す姿。