オレンジジュース~俺と一人の生徒~
さっき、こけた生徒を持ち上げた時に尻もちをついた。
お尻が少し濡れていて、リフトの椅子に座ると、気持ち悪かった。
今朝も天気は最高で、雲の隙間から差し込む太陽が、とても感動的だ。
「綺麗だな!」
俺が声をかけると、その生徒は、ゴーグルを外し、俺を見つめた。
「先生、今夜時間ありますか?」
後ろのリフトから『がんばれー』と声が聞こえた。
今夜、俺に告白するつもりか?
「今夜は見回りとかあるからなぁ…今じゃだめか?」
俺はゆっくりとそう言いながら、返事を考えた。
傷つけない断り方。
明日から気まずくならないいい方法を考えた。
「先生、彼女いるの?」
「あ、ああ。いるよ。お前は?」
ごめん。
こんな質問をして。
それから、その生徒は何も言わずに、ゴーグルをかけた。
本気で俺を好きだと言ってくれる気持ちは、本当に嬉しいよ。
でも、俺は守らなきゃいけない人がいる。
愛する人の心を不安にさせたくない。