オレンジジュース~俺と一人の生徒~
ジュースを飲み終えると、見回りに出かけた。
「おーい!明日の夜、ナイタースキーできることになったぞ!」
俺のクラスの生徒に向かって叫ぶ。
最高に幸せな瞬間だ。
廊下で缶蹴りをしていた男子は、嬉しそうに俺に近づく。
「まじで?先生、サンキュー!」
「先生、お礼に、俺らの部屋でエロ本見ない?」
俺は、ポンポンって頭に手を乗せながら、手を振ってその場を離れる。
見回りをしていると、生徒のいろんな顔が見える。
学校では見ることのできない顔。
いつも大人しい子が、はしゃいでいたり、いつもは生意気な生徒が、俺に笑顔で話してくれたり。
「先生、夜先生の部屋行ってもいいですか?」
女子から話しかけると、無意識に周りに直がいないか確かめるようになった。
いつもどこかにいるんだよな、直が。
「悪い!俺らの部屋、女子は立ち入り禁止なんだぁ!」
俺にしてはうまい嘘を思いついたが、女子達は、誰も信じていない。
「俺、夜は忙しいからぁ!!」
俺の周りから離れようとしない生徒。
あぁやっぱりだ。
直がいた。
斜め前のベンチに座った直は、俺から目をそらそうと頑張っていた。