オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「直は、俺だけの直だからなぁ・・・」
俺は、最後にもう一度直を抱きしめて、耳元でそう言った。
「また明日ね、先生!!」
元気良く手を振る直に背を向けて歩き出す。
俺は二度振り向いて、手を振った。
まだ直の匂いの残る俺の体。
さっきまでこの胸の中にいた彼女が、どんどん遠くなっていく。
俺は、将棋をしながら盛り上がる教師達の中に混じり、勝負の行方を見守った。
「新垣先生は、どの子がかわいいと思いますか?」
教師と言っても、男。
旅行の夜ともなれば、こんな会話が繰り広げられる。
「どうですかね~、まぁみんなかわいいと思いますよ!」
俺の模範的な回答に、先生達は不服そうな顔をしていた。