オレンジジュース~俺と一人の生徒~
昔の仲間
毎晩電話をしていても、寂しさは消えなかった。
ゆっくり直と話がしたかった。
手を握り、目を見て・・・
直の温度を感じたかった。
でも、今の俺達にそんな余裕はなかった。
そんなある夜、懐かしい友達から電話がかかって来た。
大学時代のバイトの友達で、昔はよく一緒に飲みに行ったり、遠くまで旅行したりした。
「久しぶりじゃん!!」
『今、お前の家の近くにいるんだけど、会えない?』
配送の仕事をしていて、深夜から朝方までトラックを運転している。
だから、なかなか時間が合わなくて、ここ数年、電話だけの関係だった。
仕事中のちょっとした空き時間だから、もちろん酒なんて飲めない。
俺はコンビニでやきそば2つとコーヒーを買った。
「お!!お前ちょっと太っただろ!」
そいつの名前は、飛田力。
名前の通り力が強くて、バイト先でも一番頼りにされていた。
力と出逢ったのは、大学時代の引越し屋のバイト。
俺より先にバイトに入ってた力に、俺はいろんなことを教わった。
偶然にも同い年だったことから、俺達は親友になった。
まぁ、今は笑い話だけど・・・
同じ女の子を好きになったりもしたっけな。
「和人は相変わらずスリムだなぁ!!もうすぐ30とは思えないな。」
「そんなことねぇよ。俺も結構おじさんだって・・・」
力のトラックの助手席で、温めてもらったやきそばを食べた。
昔、バイト中によくこうして2人でやきそばを食ったな・・・