オレンジジュース~俺と一人の生徒~
何となく心の中がモヤモヤしていた。
でも、毎晩の電話くらいしか直との時間が持てなかった。
電話を切る時の『ばいばい』が何だかいつもと違う気がしていたけど、
突っ込んで質問することが怖かった。
何があった?
何を考えてる?
直、どした?
バレンタイン前日、早めに会議が終わったので、急いで直の家に向かった。
早めと言っても、もう夜の9時を回っていた。
「どした、直・・・寂しいのかぁ?」
ちょっとふざけてしまう俺。
真剣に向き合うことが怖かった。
だから、無理して笑顔を作る。
直のおでこに触れ、直の手を握る。
何かが変だ。
いつもなら、俺が手を握ると、直も握り返してくれる。
俺が頬に触れると、直は嬉しそうに俺を見つめてくれる。
何があった?
聞けないよ。
直、俺は直のことが好きになりすぎてしまったようだ。
好きで好きで仕方がない。
ちゃんと向きわなきゃいけないのに、向き合うことが怖いなんて・・・
俺は弱すぎる。
恋をすると人は強くなれる。
でも・・・
好きになりすぎると、
今度は・・・失うことが怖くて、臆病になってしまうんだ。