オレンジジュース~俺と一人の生徒~



『パパ!一緒に暮らそう!』





第一声にそんなセリフを言うなんておかしいだろ。



きっと母親が隣で言わせてる。




わかっていても、電話の向こうにいるのは娘。





俺は慌てて、ラジオをONにしようと手を伸ばした。



でも、余計わざとらしい気がして、その手でまた暖房を強めた。






聞こえてないよな?


直。



お前は、敏感だから・・・


俺の小さな心の動きにも反応してしまう。





俺がしっかりしていないと、直を苦しめる。




「ごめんな、直。電話なんて滅多に鳴らね~のにな!」




わざと明るく振舞った。



「ほんとだよね~!珍しい。」



直の明るい声に安心した。




チラっと直の方を見た。


直は笑ってた。




安心した。


聞こえていなかった。







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