オレンジジュース~俺と一人の生徒~
直、悲しい顔しないで。
俺、子供と暮らすことなんて考えていないから。
大事だけど、俺の居場所はそこじゃない。
娘の母親は気まぐれだから、彼氏と喧嘩しただけですぐ俺に頼ってくる。
今回だって、そんなささいな出来事だったんだ。
直・・・1人で決めんな。
もうお前は俺の直なんだから・・・
「俺、子供と暮らすつもりない。よりも戻さない。」
冷え切った車の中は、俺と直の温度でだんだん温まってきた。
「子供にとって、お父さんは1人なんだよ・・・」
直、それはわかってる。
でも、直も俺にとって世界にたったひとりの「直」なんだ。
「頼むから、勝手に決めんな・・・俺の気持ちはどうなるんだよ・・・」
俺は助手席に視線を移す。
俺の目に映ったのは、涙で濡れた直の横顔だった。