オレンジジュース~俺と一人の生徒~
直のこと、心配で仕方ない。
直、お前は今・・・泣いてる?
『寂しくなったら月を見て』といつか俺が言った言葉を思い出して、お前は月を見てる?
今夜はほとんど月が見えない。
消えてしまいそうなほど薄い三日月が、分厚い雲に隠れてる。
直は、どんな想いで見えない月を見つめているのだろう。
俺はな、直の笑顔を思い出したいのに、直の泣き顔ばかり思い出してしまう。
辛いよ。
直を苦しめてしまっていたんじゃないか。
直に我慢ばかりさせていたんじゃないか・・・
ごめんな。
まだ高校生のお前に、こんな辛い決断をさせてしまって。
雲から一瞬だけ顔を出した月は、いつか見た月のように美しい色をしていた。
直も見てる。
きっと・・・
直、お前におやすみを言えない代わりに、月に向かって毎晩おやすみを言うよ。
おやすみ。
愛してるよ。