オレンジジュース~俺と一人の生徒~
直の願い
1人きりの部屋で、直との思い出の写真を見つめる。
修学旅行で撮った写真。
あれからまだ少ししか経っていないのに、俺達の関係は随分変わってしまった。
その夜、俺は直の笑顔を思い出しながら眠ることができた。
直と同じ空間にいた50分が、俺の背中を押してくれた。
それから数日後、俺は少しだけ元気を取り戻し、食欲も戻った。
直が言ったこと。
『子供にとって、お父さんは1人なんだよ』
俺は、娘に会いに行った。
自分から会いに行くのは初めてだった。
直のおかげで、一歩進めたよ。
やっぱり娘には会いたいと思うから。
公園で待ち合わせをした。
「パパー!!」
俺の体にしがみついた七緒は、俺の体から離れようとしなかった。
「おう、元気か?」
一緒に暮らしたことがないのに、俺をパパと呼んでくれる。
風呂に入れたこともないし、オムツも替えたことのない俺をこんなにも好きでいてくれる。
ありがたいことだ。
しばらく七緒を抱っこしたり、話したりした。