オレンジジュース~俺と一人の生徒~
その夜、携帯電話が鳴ることはなかった。
それは安心して眠れる材料であるはずなのに
あいつは無理して一人で耐えているようにも思えて、
俺は結局眠れない。
眠りそうになると
思い出す。
廊下の向こうから勢い良く走ってくる矢沢。
「せんせー!!おはよ!」
「元気ないじゃん!大丈夫?」
「風邪引いたの?」
「水泳の後は髪乾かさないと風邪引くよ」
あいつがくれたたくさんの俺への思いやりの言葉が
眠ろうとすると夢の現実の間で
俺の耳に甦る。
人気者なようで
一人ぼっちな俺の心を
温めてくれた天使。