オレンジジュース~俺と一人の生徒~
音楽室のドアを叩いたのは、教頭先生だった。
俺の指導方針が好きだと言ってくれて、いつも俺の意見に賛成してくれる先生だった。
50代半ばの女性の先生で、理解があって、生徒からも慕われていた。
俺は嫌な予感がした。
ドアを開けた俺を見つめる教頭先生の目は、俺を疑う目だった。
その時、俺はある生徒の顔を思い浮かべた。
つい最近、俺に告白してきたクラスの女子生徒。
荒木。
荒木が俺を好きなことは、結構有名で、本人もそれを楽しんでいるようにも見えた。
彼女がいると言っている俺に、荒木は告白した。
そして、告白だけじゃなく・・・変な疑いを持っていた。
しかもその疑いは・・・間違っていなくて。
『矢沢さんと何かあるんですか』なんて言ってきたりして。
恋をすると、その人の考えていることを知りたくなるし、その人の視線の先が気になるんだよ、と直は言っていたっけ。