オレンジジュース~俺と一人の生徒~


「進路のことで矢沢の相談に乗っていたんですが」



俺の言い訳を聞きながら、教頭先生は何度も大きく頷いた。



「そうですか。でも、こんな場所で相談に乗っていると、怪しく思う生徒もいますので気をつけてください!」



教頭先生に、俺の居場所を教えたのは、荒木だった。



荒木は、随分前から俺と直の関係を疑っていたらしく、今日も俺のあとをつけていた。




直はな、不思議な子だ。



ほとんどの女の子は、こういう場合、『ひどい!荒木さん!』って言うんじゃねぇの?


少なくとも、今まで俺が出会った女性は、みんなそう言っただろう。



直は、荒木を責めなかった。



責めるどころか、「荒木さんの気持ちわかる」なんて言うんだ。




自分が荒木さんの立場だったかも知れないって・・・目を潤ませた直を、誰よりも愛しく想う。



愛してる。



だからこそ、大事にしたい。



守りたい、この愛を・・・




俺達の愛は、何があっても大丈夫。



俺達には、長い長い未来が待ってる。



だから・・・



ちょっとだけ、俺も我慢する。






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