オレンジジュース~俺と一人の生徒~
直の為とか言って、結局は俺の為。
クリスマスまでバイトをしている彼女の元へ車を走らせた。
雪が降りそうだ。
車の窓が曇って仕方ない。
俺は、温風の前に手をかざし、かじかむ手を温めた。
さすがに、パン屋さんは今日は寂しげだ。
数軒隣のケーキ屋さんは、お客さんで溢れていた。
俺は、車から降りた。
手には、小さな紙袋。
中には『メリークリスマス!』だけのメッセージカード。
言いたいことはたくさんある。
でも、それはもう少し我慢。
「いらっしゃいま・・・・・・せ」
顔を上げた直は、俺に気付くと、目をぱちくりとさせながら口を開けた。
「やきそばパン、ありますかぁ?」
「はい。今日はたくさん残ってます」
直はレジから離れ、俺にトレイを渡す。
寂しそうなパン達を、トレイいっぱいに載せた。
ゆっくりゆっくり・・・
直と同じ空間にいる幸せを感じながら。
すぐそこにいるのに抱きしめることのできない彼女を、
ちらちらと見ながら。