オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「いちにーさんしー にいにーさんしー」
フェンスの向こうからプールを見つめるひまわり達。
太陽の光の反射する水面を一斉に見つめていた。
夏…
俺は夏が来るたびに思い出すだろう。
このなんとも言えない甘酸っぱいような
初恋のような切ない気持ちを…
今までに味わったことのない切なさ。
『好きだ』と言えないことがこんなにも
苦しいと思わなかった。
抱きしめることができないって
こんなにももどかしい。
今日に限って、矢沢は友達の中田ゆかりと一緒に一番後ろで体操をしていた。
いつも一番前の癖に…
変に意識しちゃって、俺も矢沢を見ることができずにいた。
矢沢は?
さっきからどうしてゆかりの方ばかり見てるんだ?
俺を避けてる?