オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「あれから泣いた?」
俺は、立ち泳ぎをしたまま矢沢に背を向けて聞いた。
答えが遅いので俺は回転して、矢沢に向き合った。
「何回か…」
やっぱり…
やっぱり泣いたんだ。
俺が携帯を教えたのに…お前は俺を呼ばない。
スーパーマンだろ?
俺は…
呼べよ!
いつでも
どこでも
飛んでいくから…
「ばかだなぁ…俺を呼べよ。」
俺は髪に触れた。
濡れた長い髪に触れると、矢沢は泣きそうな表情になった。
「どした?」
矢沢は目に涙をためて、精一杯の笑顔で俺に微笑んだ。