オレンジジュース~俺と一人の生徒~
第3章【心からの好き】
初めての電話
初めて
携帯電話の画面に矢沢の名前が光る。
電話がかかってくるってことは
緊急事態。
あのおでこへのキスから5日が経っていた。
とても月の綺麗な夜で
俺はアイスコーヒー片手に月を眺めていた。
「もしもし?」
電波に乗って矢沢の声が俺に届く。
不思議だった。
携帯電話を持ってかなりの年数が経つが、こんな風に思ったことなどなかった。
遠くにいる人と会話ができることがこんなにも
ありがたいことなんだって実感していた。
『声、聞いたら落ち着いたから大丈夫…』なんてさ、言うんだよ。
遠慮してさ、
俺を気遣って…
本当は泣いてんのに、
泣き声を必死で隠そうとする。