ねぇ、キスして?
結局彼はその音を聞いたら、あたしの答えを待たずにキッチンに消えていった。


そしてすぐに、二人分のチャーハンを持って戻ってきた。


あたしの答えが「No」だったかもしれないのに、最初からちゃんとあたしの分も準備してくれていたんだと思うと、胸が凄く熱くなった。


ローテーブルに置かれたチャーハンとスープを、彼と向かい合いながら座って食べた。


その間、やっぱり会話はなくて。


お互いに視線を絡ませることもなく、黙々と食べ続けた。




でも、先に彼が食べ終わってからは、なんとなくその場の空気が変わった気がした。


だから、視線だけをあげてちらりと彼を盗み見た……


つもりだった。


でも実際は、彼もこっちを見ていて、予想外にも視線が絡んでしまったから、体が固まったようにピクリとも動けなくなってしまった。


彼はそんなあたしを見て、眉を寄せた。


いつもなら、微笑み合う場面だもんね。


そういう反応をされてもしょうがないんだ。
< 30 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop