ねぇ、キスして?
「さっきも言ったけどさ、俺、恋愛することが怖いんだ。人を好きになって、その人にのめり込んで、また離れていくかもしれない……そう思ったら怖くてたまんねぇ」



そう言った彼は、今にも涙が零れるんじゃないかってほどの切ない瞳をしていて、あたしまで胸が痛くなる。


だけど……



「あたしは離れていかないよ。ずっとあっくんの傍にいる。あっくんが『離れろよ』って言ったとしても離れないよ」



切なく揺れていた瞳が大きく見開かれたあと、今度はやさしく細められた。



「そうだな。奈留なら俺の傍にいてくれそうな気がする」



彼は一旦言葉を止め、大きく息を吸ってそれをゆっくりと吐き出してから、今度は真っ直ぐにあたしの瞳を見つめながら……



「改めて言わせて?……俺、奈留のことがすっげぇ好きだよ。だから……俺と恋愛して?」


「あたしだって、あっくんのことがすっごく大好きなんだからっ!あたしはいつだって、あっくんに恋してたんだからねっ!」



そう捲し立てると、なぜか、目から涙がポロポロと溢れてきた。


彼はそんなあたしを、ぎゅっと抱き締めてくれた。
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