ねぇ、キスして？

どれだけそうしていたのか、あたしの涙が止まった頃、彼はゆっくりとあたしを離して顔を覗き込んできた。


その瞳はやっぱりやさしくて、あたしの心はポカポカと温かくなる。


だけど今はどこか切なさを含んでいて……


彼は言いにくそうに口を開いた。



「奈留、さっきも言ったように……俺には子供がいる。だから、奈留に嫌な思いをさせてしまうこともあるかもしれない」



子供……


そうだ、あっくんには子供がいるんだ。


だけど、子供がいるとしても、あっくんはあっくんだもん。


だから……



「聞かせて」


「え？」


「あっくんの子供のこと……」


「……」



あたしの言葉に彼は、黙り込んでしまったけれど……


自分の子供なのに、さっき一年以上会っていないと言っていたことが凄く気になっていた。


彼の傍にいることを選んだからには、ちゃんと聞いておきたいと思った。


そんなあたしの気持ちに応えようとしてくれているのか、彼は瞳を閉じて、ゆっくり息を吐き出してからまた口を開いた。