ねぇ、キスして?
そんな理彩さんの言葉にあっくんは黙ったままで。


きっとあたしに遠慮しているからだ。


だから……



「はい、また来ます」



あたしがそう答えた。



「奈留!?」



そんなあたしに、あっくんは慌てたようにそう言ったけれど……



「あっくんだって、愛理ちゃんに会いたいんでしょ?」


「えっ」


「あたしはあっくんと幸せになりたいから、あっくんには何も我慢してほしくない」


「奈留……ありがとう」



あっくんは、いつものようにやさしく微笑みながらそう言って、あたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。


その手に、あたしの心臓はまた大きく反応した。


そのままあっくんは後ろを振り返って、愛理ちゃんにも頭をやさしく撫でていた。


そして、二人と別れて車を走らせた。
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