竜の箱庭
少女と青年
いつの間にか空は暗くなり、シィは恐る恐る茂みから顔を出した。
暗がりの中、リーズが目の前の地面に倒れていた。
恐る恐る近寄ると、もうリーズの身体は冷たくなっていて、シィは静かに涙を流した。
リーズを殺す時に、役人は言っていた。
来訪者を匿う人間は処刑なのだと。
シィを助けようとしたルードや、偽者になったネリーも…無事である確率は少ない気がした。
それを思うと、益々シィの心には悲しみと絶望が生まれてくる。
リーズの傍に倒れるように蹲ったまま、どうすることも出来ずに涙を流す事しか出来ない。
自分と関わらなければ…そんな自己嫌悪の波に溺れてしまえれば、どれほど楽だっただろう。
「何が…強大な魔力がある、よ…大好きな人たちすら守れないのに…こんな…」
悲しみに胸が押しつぶされそうなのに、シィの身体にも周りにも、何一つ特別な変化は訪れなかった。
奇跡も魔法も、何一つ。
「…大丈夫?」
不意に聞こえた声に、シィは静かに振り向いた。
驚く程に感覚が麻痺してしまったのか、無表情のまま。
声の主は、シィが見たこともないような衣装に身を包んだ青年だった。
月明かりの下で青白い肌、海のように深い青い髪…そして、菫のような瞳。
時が止まったかのように一瞬青年を見つめると、シィはそこで初めて身を硬くした。
「誰…」
震える唇で問うと、青年はシィとリーズを交互に見つめて微笑んだ。
「私の名は、セイン。君は?」
「…エルシア」
「盗賊か何かに襲われたようだけど…近くの村の子か?」
セインと名乗った青年は、白地に金の装飾のされたローブを揺らしながら近寄ってきた。
思わずシィは、リーズを庇うようにして立ち上がる。
「そんなに警戒しないで、私は竜の門番をしている。何か困った事に巻き込まれたのかな?」