竜の箱庭
昨夜は適当な木の傍で野宿をした。
寝心地は最悪だったが、色々なことがあって疲れていたシィは朝までなんとか眠ることが出来た。
セインは早くから起きていたのか、シィが目覚めたのがわかると暖かい紅茶を差し出した。
「…ありがとう」
シィは大人しく受け取ると、ほっと溜息を付いた。
思えば、初めて村から遠くまでやってきた。
それも、こんな形でなければ楽しかったのかもしれない。
「行き先だけど」
シィの考えなど知ってか知らずか、セインはのんびりと話し出した。
「昨日、私は竜の門番だと言ったね。実は、最近竜たちの気配がとても弱っていてね。何人かの門番たちと協力して神殿を回っているんだ」
「…その、門番とか竜とか…って、よくわからないんだけど…」
「ああ、そうか。竜っていうのはね、この世界には七匹の竜がいて、この世界の柱となって、支えてくれていて…」
「竜は六匹じゃないの?」
「…そうだね、一般的にはね」
セインは微笑むと、シィの頭を撫でた。
「母さんは…六匹って…」
「うん、今はそうだね。六匹だ。まぁ兎に角、竜が世界を支えている。君は知らないかも知れないけど、元々この地方はとても肥沃な地域なんだ。水の竜、リルテノールが守護する地だし、隣には大地の竜、サドラルが守護する土地もあるからね」
「でも…最近とても干ばつが多いわ」
「今から十年ほど前からね、こうした天変地異のようなものが増えてきた。それは、世界を支える竜達が弱っているからなんだ」