竜の箱庭
「竜が死にそうなの?神様なのに?」

シィが驚いて尋ねると、セインは首を横に振った。

「竜は死なないよ。眠るだけだ」

「眠るとどうなるの?」

「大地を支える力が弱まって、この世界はいずれ枯れていくだろうね」


 途方もない話だった。
ついこの間まで、竜という存在すら知らなかったシィにとっては。

「えっと、つまり…門番は、その竜を守る人たちなの?」

「簡単に言えばそうかな。竜を癒すために、私たち門番はこの度神殿を目指す事にしたんだ」

「眠らせるの?」

「出来れば、もう少し頑張ってもらいたいところだけど、どうかな…。それをお伺いにいくんだ」

セインが微笑むと、シィは首を傾げた。

「竜とお話が出来るっていうこと?」

「今からずっとずっと、気の遠くなるような昔はね、誰でも竜と話せたそうだよ」

シィは頷くと、ぼんやりと空を見上げた。
まるで聞いた事のない話なのに、どこか懐かしいような。
そんな感覚を覚えた。

「ねぇ、来訪者って…なんなの?」

「来訪者か…そうだね」

セインは考え込むように俯くと、何か言葉を探しているようだった。
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