竜の箱庭
「…いずれまた、話そうか。そろそろ発たないと」

ややあって、セインはそれだけ言うと立ち上がった。
確かに、随分話し込んでいたようだった。
シィも仕方なく立ち上がると、毛布や食器を纏めるのを手伝った。

「明日は山に入るからね。今日中に村で必要なものを揃えないといけない」

セインの言葉に、思わずカリエル村での出来事が頭を過ぎる。
シィは頭を振ると、ぐっと前を見据えた。

「行こう」

シィは短く言うと、セインの前に立って歩き出した。
後ろを振り向いてしまえば、悲しみに飲み込まれてしまう気がして。




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