竜の箱庭
「…私、これ知ってるわ」

それは、シィがよく知っているものだった。
なぜならば、その紋章こそがシィの背に刻まれたアザと酷似していたからだ。

「なんだって…?」

シィが素直にそう告げると、セインは驚いた様に眉根を寄せた。
何か悪いことを言ったのかと、シィが不安になっていると、すぐにセインは微笑んだ。

「…そうか…、そうだね。そういうことも、あるだろう」

どこか含みのある言い方に疑問を感じないわけではなかったが、シィもそれ以上何か言う事が出来なかった。
何かを言いたくても、シィには何も答えられることはないのだ。

 そうこうしているうちに、二人の前に料理が運ばれてきた。
殆ど無言でそれを平らげると、二人は宿屋を後にした。



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