竜の箱庭
なんとか身体を捻って、水面に映る自分の背中を見つめてみる。
すると、シィの背中には一面、まるで炎の様なアザができていた。

やけどのような跡ではなく、肌の色そのものがその部分だけまるで違う。

シィは思わず小さな悲鳴を上げた。

 自分の肌が、まさかこんなことになっているなんて、この十年知りもしなかったのだ。

「な、何これ…」

「シィ、知らないの…?そうやって背中に特殊なアザがある人のことを来訪者と呼ぶのよ…。私も詳しくは知らないけど…大きな魔力を持っているとか…そういわれてて…」

「私、そんなこと知らない…」

「違う世界から来た人って言われてるのよ?そういう人たちを王都の人たちが探していて、見つけた人には高いお金が支払われるって…」

ネリーの言葉に、シィは悲鳴を上げそうになった。
もしそれが本当なら、自分も売られてしまうのだろうか。
そんな不安が過ぎり、すぐにその考えを捨てた。

ルードやリーズはいい人たちだった。
シィの背中を流してくれたのだって一度や二度ではないし、恐らくこのアザのことは知っていて黙っていたのだろう。
そう思うと、少し安心できた。

「あなたたち、このことは…シィのことは内緒よ」

ネリーがシィに服を被せながら友人たちに囁いているのが聞こえた。
ネリーも守ってくれようとしている。
友人達も頷いてくれていた。

シィは安堵の溜息をついた。
よかった、この村にいられる。

「でも…私本当に、違う世界とか…そういうのじゃないと思う」

「そうね…あなたは…捨てられたって言っていたものね…」

寂しそうに呟くネリーに、シィは頷いた。
ルードとリーズの言葉を信じるのならば、そのはずだった。

「本当のお母さんにこの村に捨てられたんだもの。その…来訪者っていうも
ののはずがないわ」
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