オオカミ系幼なじみと同居中。
あたし達は図書室に来ていた。
明日から夏休みと言う事もあり、図書室に寄っていく生徒は誰もいない。
静まりかえった図書室。
図書室独特の、印刷物の匂い。
そして、耳に届くのは蝉の旋律とグランドから聞こえる楽しげな声、それから自分の心臓の音だけ。
――夏の午後。
気温が高いこの時間帯でも、この空間は少しだけひんやりとしているようだった。
旬はあたしに背を向けたまま、窓から校庭の様子を眺めている。
そして、少しだけ顔をこちらに向けると少し照れた様子で口を開いた。
「桜井さ……、俺が告ったの覚えてる?」
――ズキン
―――――胸が痛い。
旬は改めてあたしに向き直ると、いつになく真剣な表情で言った。
「俺、もっとお前の事知りたいんだ。だから俺と付き合わない?」
真っ直ぐな瞳。
あたしはその瞳に吸い込まれそうになりながら、それを必死で耐える。
「………旬、あのね?」
あたしは意を決して口を開いた。
言わなくちゃ……ちゃんと。
でなきゃ、旬に失礼だ。
旬はあたしに気持ちを伝えてくれた。
だから、あたしも……。
口の中の水分が全部飛んでいった。
カラカラの状態で、なんとかあたしは言葉を紡ぎだす。
「あ……あの、あたし……」
ゴトッ
突然、誰もいないはずの室内に何かにぶつかる音が聞こえた。
「……ってぇ」
この声は――――まさか。
胸がドクンと激しく波打った。