オオカミ系幼なじみと同居中。
本棚に背中を預けた要は、きょとんとしてあたし達を覗き込んだ。
今この中で一番状況についていってないのはあたしだろう。
なんて、ふと思った。
「こいつの親、海外出張とかで今居なくてさ、その間未央の親父さんの知り合いのオレんち居候してんだよ」
「……出張?」
旬は「そうなの?」とあたしの顔を見た。
その視線に気づいて、慌てて首を縦に振った。
「――そ。だからオレの親も一緒だし、あんたが心配する事なんてないと思うけど?」
旬がなんとも複雑な表情をしている。
「つーわけだから。俺、行っていい?」
要は親指を立て、自分の後ろにある扉を指した。
「え……あ、あぁ」
「じゃね」
そう言って、要は出入り口へと向きをかえた。
その一瞬……
ほんの一瞬だけど、要の瞳はあたしを捕らえような気がした。
それで……
笑った気がしたのは、気のせい?
旬は、まだ納得のいかないとう顔で、図書室を出て行く要の背中を見送る。
「桜井、ごめん。俺、勝手に勘違いして。大変なんだな」
旬は気まずそうに、頭を掻いた。
「うんん、黙っててごめんね。でもきっと両親もすぐ帰ってこれると思うんだ」
あたしは足元に落ちていた鞄を拾い上げた。
あたし達の会話、聞こえてなかったわけないよね?
でも、要は関係ないと言っているかのようにさっさと行ってしまった。
興味・・・ないのかな?
あたしの事なんて、やっぱりどうでもいいのかな。
『よかったな』
まるで……さっきの要はそう言ってるようだった。
なんで?
胸がギュッとなって締め付けられる。
今すぐ要を追いかけたい。
「……旬……あのね」