オオカミ系幼なじみと同居中。
優しい旬。
笑顔が大好きな旬。
その旬が、あたしに今何をしたの?
膝が、ガクガクと震えだした。
抵抗しても女のあたしじゃ到底及ばなかった力。
敵うはずがない。
旬の顔が涙でぼやけて見えなくなった。
「……相田が好きなんだろ?」
「え?」
旬の足が一歩動くたび、あたしの体は反射的に後ずさりする。
「俺は桜井を見てた。だから、桜井の目がいつも誰を追ってるなんてすぐわかる」
旬は哀しく笑った。
いつの間にか、頬にはポロポロと涙が溢れていた。
「……あ…あたし……」
旬の両手が頬に触れた。
それに反応して、体がピクンと跳ねる。
「はは。そんなに拒否んなよ……俺の方が謝らないと」
見上げた旬の瞳は優しいいつもの旬だった。
「相田がここに居るの……俺、知ってたんだ」
「へ?」
挟まれたままでうまく言葉に出来ず、変な返事をしてしまった。
そんなあたしの頬は左右に引っ張られる。
「ら、らりしてんろ?」
旬はククっと肩を震わして笑った。
その顔を見て、あたしは呆気に取られるばかりだった。
「さっき用があってここの前通った時、たまたま隠れて寝てるの見つけたんだ」
ニヤッと悪戯に笑うと旬はパッと手を離した。
「試してやろうと思って」
「……試す?」