オオカミ系幼なじみと同居中。


あたしの視線の先には、要の姿があった。

その表情は、逆光になっていてすぐに確認する事が出来ない。

あたしは、目を細めて何も言わない要を見つめる事しか出来ずにいた。




もしかして、今の見られてた?




そう思うと、心臓は急にドクドクと波打った。
その音が自分の耳にリアルに届いて、背中には冷たい汗が伝う。




どうしよう・・・

なんて言おう・・・・

なんて言えば不自然にならない?




あたしは脳みそをフルに回転させる。

もう目眩さえ起こしそうだった。



その時、要の唇がピクリと動いた。

ダメ!なにも思いつかない!!

あたしは、反射的にギュッと目を閉じた。





「なにしてんだよ。こんなとこで」


「・・・・・」



・・・・え?




変わらない要のハスキーな低音。

その声にあたしはハッとして顔を上げた。
見上げた先には、きょとんとした要の顔。少し首を傾げてあたしの顔を覗き込んでいる。


「鍵でもなくした?」


そう言って、固まっていたあたしを横切るとポケットに手を突っ込んだ。
要はいつものように慣れた様子で鍵を開けると、いつまでも動かないあたしの方を振り返った。


「・・・はいんないの?急遽バイト早く上がれたんだ。久しぶりに一緒に飯でも作ろうぜ」


要はそう言うと、さっさと先に家の中に上がって行ってしまった。


「・・・・」




絶対に見てたのに・・・なんで何も言わないの?

見てないフリするの?


要はなにを考えてるの?



あたしは階段を上がっていく要の後姿を見つめて何も言えなかった。



胸がドキドキして・・・・

なんだかわからない感情がグルグルと回ってるようだった。


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