オオカミ系幼なじみと同居中。
*第7部*
・甘い残り香
「未央!?…どうしたの?」
「…いきなりごめんね…早苗」
上着も着ないでずぶ濡れのあたしを見て、早苗は大きな瞳をさらに見開いた。
「…ハイ。ココア。…で、なにがあったの?」
着替えを持っていなかったあたしは、少し大きい早苗の服に身を包んで両手でそれを受け取った。
早苗はあたしの隣に腰を下ろすと「言ってみな?」と言うように顔を覗き込んだ。
それに答えず、あたしはただ目の前のカップの湯気をぼんやり眺めた。
ぬいぐるみや小物が多いあたしの部屋とは正反対の早苗の部屋。
必要以上の物はなにもない。
女の子の部屋…と言うよりは男の子の部屋みたいだ。
無造作に束ねた髪からシャンプーのいい香りがする。
早苗は大人っぽい。
あたしはそんな事を考えながら、熱いココアを口に含んだ。
「……要に言っちゃったんだ……1番言っちゃいけない事」
「…うん」
早苗はあたしの言葉をただ黙って聞いてくれていた。
時々うなずいて。