オオカミ系幼なじみと同居中。
「えぇ!? あんたなんか大変な事になってんじゃん」
あたしは早苗に今日までの出来事を全部話した。
「うん、うん」ってあたしの話に相槌をうってくれてた早苗は、最後まで聞き終わると大きなその瞳をさらに見開いて、あたしの顔を覗き込んだ。
「そうなんだよ……もう、どうにかなっちゃいそう」
「大丈夫、大丈夫。……ってどうにかってその同居相手とどうにかなるってこと?」
不意に真剣な顔をして、早苗は身を乗り出してきた。
……なんでその瞳は、そんなに輝いてるのかな?早苗ちゃん。
あたしをからかう早苗の言葉も今は、笑えない。
早苗の言葉に、さらに凹む。
どうにかなるわけないじゃん!
なるわけ……。
なるわけないよね?
「あ……ええと、で?その男ってどんなヤツ?」
だんだん青ざめていくあたしの様子を見て、早苗は慌ててあたしの顔を覗き込んだ。
「あ、桜井。 おはよ」
こ、この声は……
聞き覚えのある声が、色んな音をかきわけてあたしの耳に届いた。
声のする方に慌てて視線を送る。
「藤森くんっ」
視線の先にいたのは藤森旬 (しゅん) 。
旬は、爽やかな笑顔で「よっ」って片手を挙げた。
あたしは、顔が赤くなっていくのを感じてそれが気付かれないように思わず顔を背けてしまった。
早苗はその様子をおもしろそうに眺めている。
「どうした?顔、赤いじゃん。熱でもあるんじゃねぇの?」
旬は、あたしの顔を覗きこんだ。
彼は、同じクラスメイト。
陸上部で高飛びをやっている。
とってもかっこいい。
目は大きい訳じゃないけど、切長な目だ。
背も高く、一見近寄り難いイメージがあるようだ。
短い黒髪はいつもワックスでしっかりとセットされていた。
制服も適度にゆるく着ている旬は、他の男子より断然目立っている。
そう、この人があたしの片想いの相手。