オオカミ系幼なじみと同居中。
振り返ると、カフェから慌てて出てきた美咲さんの姿が目に飛び込んできた。
美咲さんは背中に夕日を浴びて、逆光になった顔はあたしからははっきりとは確認できなかった。
「……あの日ね!」
あたしは少し目を細めて彼女の黒いシルエットを見つめた。
あの日……?
首を傾げるあたしに美咲さんは息を整えながら言葉を繋いだ。
「あの、クリスマスの日!
このカフェでパーティが開かれてたの。 要は、出たくないって最後まで言ってたんだけどね? あたし……無理言ってパーティに来てもらった。 どうしてもジンさんといたくて。バイトの合間にも相談にのってもらってた。
あたし1人じゃ勇気でなかった。 未央さんの事も考えずに……。 ほんとにごめんなさい。 たくさん不安になったでしょ?
あたし……酷い事してた。 今までのあたしはきっとその気持ちにも気づけない最低なやつだったんだよ。 きっと要はそんな言い訳しないだろうから……」
「……」
美咲さんはそこまで一気に言うと、大きく息を吸い込んだ。
あたしはただ、黙って首を振るしかなかった。
だって、あたしは要の事最後まで信じ切れなかったんだもん。
きっとあたしだって悪い。
こんなすれ違いがおきちゃったのは、美咲さんのせいだけじゃなくて……きっとあたし自身の問題なんだ。
「美咲さん……要が必死にバイトしてた理由ってなんですか?」
あたしはじっと足元を見つめてから、視線を上げた。
「……未央さん、もっと自信もっていいと思う。 あなたが思ってる以上に要は……。 あ! ごめんね……あたしがこんな事言うのは間違ってるよ。 直接本人に聞いてほしいな」
「え?」
美咲さんはそう言って、にっこりと微笑んだ。