オオカミ系幼なじみと同居中。
「またカフェに遊びに来てね。美味しいストロベリーティいれるから」
「……え、あの……はい」
どういう事?
美咲さん……どこまで知ってるの?
「あ!……そうだ、言い忘れてた。要がお店に来た時ね?
なんだか“約束の場所”がどうとか言ってた」
美咲さんの声が夕焼けの街に溶けていく。
ざわざわと街の騒音の中、なぜかその声だけがクリアにあたしの耳に飛び込んできた。
や……くそ…く?
それって……
「――それってもしかして」
「もういかなきゃ……それじゃ、またね」
振り返って顔を上げたときには、お店の中に消えていく美咲さんの残像が微かに残っていただけだった。
あ……行っちゃった……
約束?
約束の場所ってもしかして……
脳裏に浮かんできたのは、あたし達が初めて出会ったあの場所。
なに?
あそこがどうしたの?
胸がドキドキと大きく鼓動を刻む。
あたしは、手が震えているのにやっと気づいた。
「…………」
暫くその場から動けずにいると、いつのまにか早苗があたしの傍までやってきていた。
「クリスマスすっぽかしたんだし、一発殴ってやっても罰あたんないと思うよ?」
「え?」
「このまま離れ離れになるなんてなんかムカつくじゃん?」
早苗はそう言うと、少しだけ口を尖らせて見せた。
呆れたように、でもほんのちょっと嬉しそうに。
年が明ければ、忙しくなる。
要に会えるのも、きっと今日がラストチャンスだ。