オオカミ系幼なじみと同居中。
・最高のプレゼント
大晦日。
世の中は今、各地でカウントダウンがはじまっている頃だろう。
走り抜ける住宅街には、きっとこれから初詣に行くと思われる人達と何度かすれ違った。
その人の波とは真逆にあたしは向かってる。
植木の間に見える緑のフェンス。
街灯に照らされた小さな公園の入り口が見えてきた。
あたしは迷わずその中に滑り込んだ。
公園は、この年の瀬にも関わらず、とても静かでいつもと何も変わらない。
その事にホッとしつつ、ちょうど真ん中に植えられている古い桜の木の下まで駆け寄った。
「……はあ……はあ……」
あたしは肩で呼吸しながら、落ち着くようにもう一度深く息を吸い込んだ。
―――……。
あたりをグルッと見渡してみても、誰の気配も感じられなかった。
小さな敷地内にはそれに見合った小さなブランコ。
その隣の街灯は、少しだけでもあたしを暖めてくれているかのように、柔らかなオレンジの光で公園の中を照らしていた。
「……要?」
…………。
でも、返事は返ってこない。
いない?
やっぱり間に合わなかった。
あたし……賭けてた。 ここで会えたら素直になろうって。
期待……してたのがいけなかったのかな。
ストロベリーの紅茶をオススメとして、あのカフェに置いたのも。
バイトを突然辞めちゃったのも。
美咲さんに言った言葉も、全部。
要はまだあたしを好きなんだって。
期待してんだ。
鼻の奥がツンとして、あたしの視界はぼんやりと霞んでいく。
唇が小さく震えて、あたしは両手を胸の前で強く結んだ。
あの約束……嘘だったの?
「……要……」
―――……
――…
「……おせーんだよ。 バーカ」
その時、誰もいないと思っていた公園で突然声がして、あたしの体はビクリと跳ねた。