オオカミ系幼なじみと同居中。

・最高のプレゼント


大晦日。
世の中は今、各地でカウントダウンがはじまっている頃だろう。


走り抜ける住宅街には、きっとこれから初詣に行くと思われる人達と何度かすれ違った。


その人の波とは真逆にあたしは向かってる。




植木の間に見える緑のフェンス。
街灯に照らされた小さな公園の入り口が見えてきた。

あたしは迷わずその中に滑り込んだ。


公園は、この年の瀬にも関わらず、とても静かでいつもと何も変わらない。
その事にホッとしつつ、ちょうど真ん中に植えられている古い桜の木の下まで駆け寄った。



「……はあ……はあ……」



あたしは肩で呼吸しながら、落ち着くようにもう一度深く息を吸い込んだ。




―――……。



あたりをグルッと見渡してみても、誰の気配も感じられなかった。

小さな敷地内にはそれに見合った小さなブランコ。
その隣の街灯は、少しだけでもあたしを暖めてくれているかのように、柔らかなオレンジの光で公園の中を照らしていた。



「……要?」




…………。



でも、返事は返ってこない。
いない?
やっぱり間に合わなかった。


あたし……賭けてた。 ここで会えたら素直になろうって。
期待……してたのがいけなかったのかな。


ストロベリーの紅茶をオススメとして、あのカフェに置いたのも。

バイトを突然辞めちゃったのも。

美咲さんに言った言葉も、全部。

要はまだあたしを好きなんだって。
期待してんだ。



鼻の奥がツンとして、あたしの視界はぼんやりと霞んでいく。
唇が小さく震えて、あたしは両手を胸の前で強く結んだ。



あの約束……嘘だったの?




「……要……」



―――……
――…



「……おせーんだよ。 バーカ」





その時、誰もいないと思っていた公園で突然声がして、あたしの体はビクリと跳ねた。





< 277 / 301 >

この作品をシェア

pagetop