オオカミ系幼なじみと同居中。
声のした方へゆっくりと視線を送る。
そこには―――……
「…………」
あ……
誰もいないと思っていた桜の木の根元。
そこにいたのは、寒そうに体を小さくしてうずくまる、要の姿があった。
「……ど…して……」
あたしは、やっとの事で言葉を紡ぎだす。
要は腕を組んだまま、ゆっくりと体を起こした。
そして、呆然と立ち竦むあたしの目の前までやってくると、両手を上着のポケットに突っ込んだ。
……怒ってる?
眉間にシワを寄せて、あたしを見下ろす要。
なんだか、あたしは要と最初に出会った頃を思い出していた。
そうだ……
あの時もこうだった。
めんどくさそうに、少し挑発的な目であたしを舐めるように眺めた要。
不覚にも、その瞳の力に胸がドキリと高鳴った。
『あー。 あんたがミオ』
そう言って、ふーんと鼻で笑った要。
もう一度、その言葉を言われそうな感覚になってしまう。
そんな事をぼんやりと考えていた……
え――――
そして不意に要がポケットから手を出して、あたしの体を強引に引き寄せた。
……ドクン
走ってきた事で、鼓動を速く刻んでいた心臓がそれよりも大きく波打った。
「あー! マジさみぃ」
要は吐き出すように言って、さらにギュッとその腕に力をこめる。
あたしを包む要の体は、確かに冷たくて長い時間ここにいたことがわかった。
でも、あたしは要の体に手を回す事ができなくて。
固まったまま、その場に立ち尽くしていた。
だって……
あたしが来るかどうかなんて、わからなかったはずなのに……
ずっとこんな寒いところにいたなんて。
「なん……で?」